KAPとは何ですか?

カイト・エアリアル・フォトグラフィー(Kite Aerial Photography)のことで、これは、凧を使って空撮を行う写真撮影法を言います。


 この技法による撮影は、フランスのラブルギュールに住むアルベルト・バチュー氏により1888年に初めて成功したとされています。この時期、ヨーロッパでは多くの人々が写真を空から撮影することに挑戦し、様々な撮影法が開発されました。気球や小型ロケットを使ったり、中には鳩に小型カメラを付けて行ったという記録も残っています。この様な試みの一つとして凧による空撮法も生まれたのです。しかし、これらの空撮法は、航空機の発達とともに衰退し、凧による空撮法も人々から忘れさられてしまったのです。


 今から20年程前に、この技法を復活させようとヨーロッパにおいて資料集めが始まりました。その後、、日本、アメリカが加わり新しい技術の開発、KAPの宣伝・普及などを行うことにより、現在世界中に約500名の愛好者が趣味として楽しんでいます。



 一般的に空撮と言うと、ヘリコプターや飛行機から撮影された写真を思い浮かべますが、科学の発達と共に様々な方法が考案されています。様々な方法が開発される背景には、撮影する目的や条件により撮影方法を変えることが要求されたのです。空撮はまず撮影する高度の違いにより撮影手段を選びます。大気圏外からの撮影・高度300m以上からの撮影・高度300m以下(この300mという境界は航空法によるものです)からの撮影と大別できます。大気圏外からの撮影はもちろん人工衛星によるもので、高度300m以上からの撮影は、飛行機・ヘリコプター等からの撮影がこれにあたります。KAPはもちろん300m以下からの撮影に属します。この300m以下の撮影にはKAP の他に、気球・ラジコンヘリ・ラジコン飛行機などを使って行う方法があり、更に様々な条件(地形・気象・コスト・運搬方法等)により実際に撮影する手段を検討しなければなりません。300m以下の撮影では、KAPは以外に重要な位置をしめています。それは、KAPが凧によりカメラを持ち上げて撮影するという非常にシンプルな方法で、特にコスト・運搬方法において利点があると共に、他の方法が風に弱いということが挙げられます。最近では、大学の研究室、特に遺跡調査・生態調査などを行う場合に気球による簡易空撮法に加え、KAPを取り入れるところも多くなっています。



 凧による空撮法と言っても実際どのような機材を使い、どのように撮影するかとなると様々な疑問が浮かぶと思います。日本では凧というと、正月に子どもが揚げる小さな凧を思い浮かべますが、KAPに使用する凧は、一般的な感覚ではかなり大型の凧ということになります。凧の種類はどのような物でも構わないのですが、重さ2kg程あるカメラをつり上げるのですからデルタカイト(良く見かけるゲイラカイト)だと幅5m前後の物を使用します。カメラのレリーズは、ラジコンやタイマーを使用して行います。その他にも「凧にカメラをぶら下げてブレないものか?」とか「どのように目標物をとらえるのか?」など疑問に思われることが多いと思いますが、実際に行ってみると、速いシャッタースピードで目標物にカメラを向け撮影すれば、それなりの写真を得ることが出来ます。もちろんこの技法が開発された頃は、現在使われているようなモータードライブ内蔵のカメラもありませんし、ハイテク機器もありませんでしたから、大型のカメラを使いレリーズも火縄を使用して行っていたそうです。当時の資料は、発祥地であるラブルギュールに作られた博物館に保存されています。



 人間は鳥のように大空を自由に飛ぶことは出来ませんが、撮影しているときは、凧とともに大空からの景色を楽しむことが出来る気がします。みなさんも是非挑戦してみて下さい。


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