19世紀後半、人々の空撮に寄せる熱意には目をみはるものがありました。多くの人が様々な空撮法を開発した。そのひとつにカイト・エアリアル・フォトグラフィーがありました。大型の凧にカメラを搭載して空撮を試みました。1888年フランスのラブルギュールに住むアルトール・バチュー氏によりはじめて撮影に成功しました。その後、飛行機の発明により空撮の方法も一変し、それまで開発された空撮法は衰退してしまいました。今から15年程前にヨーロッパと日本で低空域の簡易空撮法としてカイト・エアリアル・フォトグラフィーが注目されはじめ、当時の資料の収集及び機材の開発が始められました。1988年にこの技法の発祥100年を記念してラブルギュールにカイト・エアリアル・フォトグラフィー・ミュージアムが創られました。ここには、当時の貴重な資料が展示・保存されています。
現在、カイト・エアリアル・フォトグラフィーに関する活動をしている主な団体は「Kite Aerial photography worldwide association」と「日本カイトフォトグラフィー協会」の2つがあります。
本 部 ブリュッセル
会 長 ミッシェル・ドザリエ 氏
会員数 約450名 1985年結成。
本 部 東京都中野区
会 長 室岡克孝 氏
会員数 約50名 1986年結成。
一般的には空撮と言うと、ヘリコプターや飛行機に乗り撮影したものを思い浮かべますが、科学の発達と共に様々な方法が考案されています。様々な方法が用いられている背景には、撮影する目的や条件により撮影方法を変えなければならないということが挙げられます。空撮はまず撮影する高度の違いにより撮影手段を選びます。大気圏外からの撮影・高度300m以上からの撮影・高度300m以下からの撮影と大別できます。この300mという境界は航空法によるものです。大気圏外からの撮影はもちろん人工衛星によるものです。高度300m以上からの撮影は、飛行機・ヘイコプターからの撮影がこれにあたります。KPはもちろん300m以下からの撮影となります。この300m以下の撮影にはKPの他に、気球・ラジコンヘリ・ラジコン飛行機などを使って行う方法があります。更に様々な条件(地形・気象・コスト・運搬方法等)により実際に撮影する手段を検討しなければなりません。300m以下の撮影では、KPは重要な位置をしめています。それは、KPが凧によりカメラを持ち上げて撮影するという非常にシンプルな方法なので、特にコスト・運搬方法において利点があると共に、他の方法が風に弱いということが挙げられます。現在、遺跡調査や生態調査などで空撮をする場合、気球での撮影とKPによる撮影が併用されることが多くなっています。
空をとぶ夢はだれもが一度は見たことがあるでしょう。そして鳥のように自由に大空を羽ばたけたらとはだれもが考えることです。夢で見た下界の景色はいつまでも印象に残っていませんか? このように上空から見おろした景色を日本語では鳥瞰図、英語ではBIRD'S EYE VIEWといいます。このような景色を、凧でカメラを吊り下げることによって、空中から撮影しようという仲間が集まって日本カイトフォトグラフィー協会(JKPA)をつくりました。凧による空撮は、個人で行え、コストも安く、場所の自由度が高い、特別なテクニックもいらないなどのメリットがあり個人の趣味のほか各方面の学術調査研究にも世界中で幅広く活用されています。 |
1986 日本カイトフォトグラフィー協会 結成
1989.2 第2回世界カイトフォト展(新宿野村ビル ロビー) 開催
国際シンポジウム(コニカプラザ:東京) 開催
1992.8 フォトフェスタ '92 協賛
1993.8 フォトフェスタ '93 協賛
1994.5 カイトフォト展 '94(コニカプラザ:東京) 開催
国際シンポジウム(コニカプラザ:東京) 開催
KPセミナー(コニカプラザ:東京) 開催
1998.5 カイトフォト展 '98(コニカプラザ:東京) 開催
1998.7 カイトフォト展 '98 横浜展(小野測器:横浜) 開催
2001.11 カイトフォト展 開催 富山県福岡町「ミュゼふくおかカメラ館」
2002.1 カイトフォト展 開催 熊本県阿蘇郡長陽村「ギャラリー聚遠館
〔組 織〕
会 長 : 室岡克孝
副 会 長 : 渡部達矢
事 務 局 長 : 富永信之
書 記 : 鈴木良明(会報兼務)
会 報 : 市川泰憲(イベント兼務)
会 計 : 中島正己
監 査 : 遠藤浩平
特 別 役 員 : 力丸厚、小池俊雄
現在会員数 : 約60名
〔活動内容〕
(1) 年2回、会報(凧と空撮の専門誌)を発行。
(2) 凧、カイトフォト、簡易空撮についての情報の発信。
(3) シンポジウム、カイトフライング大会、写真展を企画・運営。
(4) カイトフォトの技術指導。
(5) カイトフォトの撮影協力。〔会員特典〕
(1)
年2回以上発行される会報(凧と空撮の専門誌)が送付され、自分の記事も自由に発表できます。
(2)
凧、カイトフォト、簡易空撮についての情報を、会報の他電話やFax、e-mailなどで直接得ることができます。
(3)
共同購入による安価な機材や特製のカイトフォトグッズを購入できます。
(4)
会員証の提示で、指定店でカイトフォト機材の割引購入ができます。
(5)
JKPA主催のミーティング、カイトフライング大会、写真展に参加できます。
JKPAでは、KPは手軽に行うことができる空撮法として、遺跡調査・生態調査・地質調査等を行う研究・調査団体からの協力要請があり、撮影協力・撮影法指導・機材貸出・機材調達などを行っています。また、趣味でKPを楽しむ方のサポートも行っています。現在までにKPの使われた主な調査は下記の通りです。
KPを活用した調査
阿武隈川河川砂州調査 東北大学土木工学河川研究室
エジプト,ネロ神殿調査 京都平安博物館・古代学協会
シリア,テルマストーマ遺跡調査 古代オリエント博物館
スリランカ遺跡調査 早稲田大学理工学部建築史科
中国生土建築(ヤオトン)調査 東京工業大学工学部建築科茶谷研究室
南極オキアミ調査 東京水産大学資料研究室
エジプト遺跡調査 財団法人 中近東文化センター
荒川河川敷等調査 荒川河川研究グループ
四国四万十帯地質調査 高知大学理学部地質学教室
グランドキャニオン調査 東京都立大学理学部地質学教室
ネパール集落調査 東京農工大学環境保護科・ヒマラヤ技術協会
名古屋市トヨタ織機工場跡地調査 トヨタ財団
堂ヶ谷戸遺跡調査 世田谷区遺跡調査会
糸魚川−静岡トレンチ地質断層調査 東大地震研究所
青森県蕪島のウミネコ生態調査 文部省統計数理研究所
南米ペルー,サバンナ調査 牧野標本館・植物系統分類学講座
イタリヤ,ポンペイ遺跡発掘調査 京都平安博物館・古代学協会
グリーンランド地形調査 北海道大学環境科学研究科
南極上空微粒子サンプリング 名古屋大学空電研究所
中国内蒙古毛烏素砂漠の緑化状況調査 京都芸術短期大学
水産海洋研究 東海大学海洋学部
シリア・パルミラ遺跡地下墓発掘調査 なら・シルクロード博記念国際交流財団
釧路湿原自然環境調査 トラストサルン釧路
「凧を用いた空撮技術の研究」
「凧による1000mレベルからの空撮手法の開発と積雪領域研究への応用」